横浜を散歩しながらChatGPTと短歌を作ってみた

はじめに

こんにちは、アキヤマです。

YouTubeチャンネル「ゲームさんぽ」ってご存知でしょうか。
専門家と一緒にゲームの世界を巡り、その人ならではの視点、例えば建築だったり、歴史だったり、生き物だったり、を解説するチャンネルです。

その中に「ゲーム吟行」という、俳人と一緒にオープンワールドゲームを歩きながら俳句を詠む企画があります。

この企画に影響されて、ド素人ながら自分も俳句を詠んでみたくなったのが今回の発端です。

しかし、早速これを進めるには難点がありました。
それは俳句には季語が必要だということ。これを一朝一夕で覚えて使うことは厳しい…。

まあ、こういうときにはChatGPTに聞けば大体なんとかしてくれます。

と、思ったのですが、これもうまくいきませんでした。
季語だけをChatGPTにインプットさせても、ChatGPTは季語をうまく使えませんでした。

詳細は割愛しますが、例えばテスト形式で「“風船”はいつの季語ですか?」というような質問には「春の季語です」と正しく答えられます。
しかし「春の季語を使って俳句を作って」とお願いしても、自発的に「風船」を含んだ俳句が作れません。

何故なのかはChatGPTの中身がわからないので断言しては言えないものの、人間に当てはめて考えれば、知識はあっても経験がないからなのかなと思います。
対策もできるのですが、しかしそれには俳句を収集して学習させるという作業が発生し、それは膨大な時間になってしまいます。

そこでまずは季語がなくても成立する短歌にシフトして考えることにしました。
というわけで消極的な理由ではありますが、ChatGPTとともに短歌を作る散歩に出かけました。

直近で有島武郎の「一房の葡萄」を読んでいたので、舞台となる横浜近辺を歩いてみることにしました。

大さん橋

早速来たのは大さん橋。
ずいぶんと大きなクルーズ船が停泊している様子に惹かれて眺めてみました。

早速ここで、ChatGPTの力を借りてみます。

夏の空 街も港も 青に溶け

と、いきなりごめんなさい。
最初は設定ミスで短歌ではなく、俳句を出力してしまいました。

ただ、写真だけでこの俳句が出てきたのは早速面白かったです。
特に「青に溶け」は空と海の景色を彷彿させますし、他のものを溶け込ませるほど大きくて流動的であることを感じさせます。

とはいえ、このような生成AI特有の「整っているけれど味気ない」感が拭えません。
こうした整然とした表現に深みを加えるためには、その短歌から連想されるもう一歩先の物語や意図が必要です。

それを考えるには、この日は随分と暑い日だったのですが、お盆を過ぎた、ピークは過ぎた暑さでした。
まだ「夏の終わり」まではいかないまでも、港のイメージとリンクして「夏を見送る」くらいというような。

そんなニュアンスを感じる時期と景色だなとふと思ったことから、「青に溶ける」と「夏を見送る」というニュアンスを含んで1首、出力してみました。

青空に 街と港が 溶け込んで 夏の終わりを そっと見送る

うーん、という感じでした。
ただ思ったことを入れればいいというわけではないのが難しいですね。

31文字で表現される以上の意味や意図を込めたいところですが、どうしても31文字分のことしか言えていない感覚が残ります。

とはいえこのように思い浮かべたものが目の前に出てくると、そのフィードバックが行えるようになります。
そうして思ったのは、この場に立ち止まるきっかけとなった船のイメージがどこにも反映されていないということに気づきました。

逆に「青に溶け」はその字面の良さに引っ張られただけの借り物の言葉で、自分から出てきた言葉ではありません。
そう考えると船のイメージを組み込みながら、「夏を見送る」というニュアンスを組み込みたいです。

するとこうなりました。

汽笛鳴り 港を離れ 夏の影 出航してまた 来年戻る

この1首は完全に自分の目指すものとは異なりますが、気づきがありました。

それは「出航してまた来年戻る」の部分を読んだときに思いました。
すべてがそうとは言えませんが、船はどこかにいってもまた港に戻ってくるという特徴があります。

さらに考えてみると、船はずっと行ったり来たりのループを繰り返しています。
少し飛躍した発想ですが、これはなんだか時間の流れのようにも思います。
またそれと同時に、船は同じでも乗っている人は違うという意味で、諸行無常のような感覚もあります。

そしてこのときは季節のイメージと頭の中で合致しました。

夏が去るとともに船は出港する。
自分の街が冬になるころには、船はどこか南半球にある港にたどり着いて、その街に夏をもたらしている。
さらに時が過ぎて春を越えた頃、またその船は自分の街の港に戻ってきて、新たな夏が始まる。
そんな時間と循環のイメージが連想されました。

そこで、「夏も街から去り、港の船も去っていく。しかしその船は海を越え、また戻ってくれば夏が来る」というイメージが固まりました。
そうしてできたのが以下の1首。

夏は行く 船は港を 後にして また巡りくる 海原を越え

これで一つ、自身が納得できる1首が出来ました。

一旦ここまでで感想を述べると、最も重要だったのは、ChatGPTとのやり取りを通じて、自分の中にあるぼんやりしたアイデアを引き出していくことだったと思います。

この記事では過程の4首のみを掲載していますが、実際には20首ほどのやり取りを経て最終形にたどり着きました。
その過程で、最初はそれっぽい言葉を並べていただけのものの、徐々に短歌に込めたい意図や方向性が明確になっていきました。

ですからChatGPTに作ってもらうというよりも、自分の頭の中にあるものをChatGPTに見つけてもらうような作業だったように思います。

ここで記事をまとめて終わっても良いのですが、他にも別の場所で3首ほど作成しました。

行き先を 失くした階段 それでもね ここにあること 意味があるんだ
崩れたる レンガの隙間に 光差し かつての暮らし 重なる木漏れ日
投げられて 打たれた行方で 悲鳴湧く 恐れ慄け 俺がボールだ

これらの短歌は次ページにてもう少し解説させていただこうかと思います。

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